損益分岐ROASの求め方(粗利率から必要なROASを出す)
広告のROASがいくつなら黒字かは、商品の粗利率で決まります。損益分岐ROASは1÷粗利率で、粗利率25%なら4倍(400%)です。ただし粗利率は、仕入れだけでなく手数料や送料も引いて出す必要があります。式の理由、早見表、計算例、CPAとの関係をまとめました。
公開:2026年10月17日 最終更新:2026年10月17日 執筆:板野 克基(株式会社ブライトアセット) 編集方針
要点
- 損益分岐ROAS(広告費と、広告で増えた粗利がちょうど同じになるROAS)は
1÷粗利率です。粗利率25%なら4倍(400%)です。 - ここでの粗利率は、売価から仕入れ・モールの手数料・送料・梱包など売れるたびにかかる費用を引いた残り(広告費は引かない)の割合です。仕入れだけを引いた粗利率で計算すると、損益分岐ROASを低く見積もってしまいます。
- 広告費を払ったあとに目標の利益率を残すには、
1÷(粗利率-目標利益率)のROASが必要です。粗利率25%で10%残すなら約6.67倍(667%)です。 - 1件の注文あたりで見るなら、赤字にならないCPAの上限は
客単価×粗利率です。客単価5,000円・粗利率25%なら1,250円です。
ROASとCPAの定義
| 指標 | 計算 |
|---|---|
| ROAS(広告費用対効果) | 広告経由の売上 ÷ 広告費 |
| CPA(コンバージョン単価) | 広告費 ÷ コンバージョンの件数 |
Amazon広告のガイドではROASを「広告収益÷広告費」(ACOSの逆数)、Google 広告のヘルプでは目標広告費用対効果を「売り上げ500円÷広告費用100円×100%=500%」の例で説明しています。ROASは「4倍」とも「400%」とも書き、どちらも同じ意味です。平均コンバージョン単価は、広告によるコンバージョンの総費用をコンバージョンの総件数で割ったものです。
1÷粗利率になる理由
広告経由の売上をS、広告費をA、粗利率をmとします。広告で増えた粗利は S×m です。これが広告費Aと同じになる点が損益分岐なので、S×m=A です。両辺をAとmで割ると S÷A=1÷m になり、左辺の S÷A がROASです。
Amazon広告のガイドにも「利益を維持するには、ACOSが利益率よりも低くなければなりません」とあります。ACOSはROASの逆数なので、ROASが1÷利益率より高ければ黒字、という同じ関係です。
早見表:粗利率と損益分岐ROAS
| 粗利率(広告費を引く前) | 損益分岐ROAS |
|---|---|
| 10% | 10倍(1,000%) |
| 15% | 約6.67倍(667%) |
| 20% | 5倍(500%) |
| 25% | 4倍(400%) |
| 30% | 約3.33倍(333%) |
| 40% | 2.5倍(250%) |
| 50% | 2倍(200%) |
粗利率が低い商品ほど、必要なROASは急に高くなります。粗利率が10%を切ると、広告費1円あたり10円より多く売れないと赤字です。
計算例:客単価5,000円・粗利率25%
売価5,000円の商品で、仕入れ2,500円、モールの手数料10%(500円)、送料と梱包750円がかかるとします。広告費を引く前に残るのは 5,000-2,500-500-750=1,250円 なので、粗利率は 1,250÷5,000=25% です。
- 損益分岐ROAS:1÷0.25=4倍(400%)
- CPAの上限:5,000×0.25=1,250円
| 確かめ(広告費100,000円・ROAS 400%) | 金額 |
|---|---|
| 広告経由の売上(100,000×4) | 400,000円 |
| 粗利(400,000×25%) | 100,000円 |
| 広告費を引いた利益 | 0円 |
実績が広告費80,000円・広告経由の売上280,000円なら、ROASは3.5倍(350%)で、損益分岐の4倍に届きません。粗利は 280,000×25%=70,000円 で、広告費を引くと10,000円の赤字です。注文が 280,000÷5,000=56件 なら、CPAは 80,000÷56=約1,429円 で、上限の1,250円を上回っています。
仕入れだけを引いた粗利率((5,000-2,500)÷5,000=50%)で計算すると、損益分岐ROASは2倍になり、この実績(3.5倍)を黒字と見誤ります。
広告前の利益は、手数料込みで売価から逆算して確かめる販売価格の逆算(無料・登録不要)→利益を残すのに必要なROAS
広告費を払ったあとに、広告経由の売上のうち一定の割合を利益として残したいときは、粗利率から残したい利益率を引いてから、1をその数で割ります。
| 粗利率25%で残したい利益率 | 必要なROAS |
|---|---|
| 0%(損益分岐) | 4倍(400%) |
| 5% | 5倍(500%) |
| 10% | 約6.67倍(667%) |
| 15% | 10倍(1,000%) |
確かめ:広告費60,000円で売上400,000円(ROAS約6.67倍)なら、粗利は100,000円、広告費を引いた利益は40,000円で、売上の10%です。1件あたりで見ると、5,000×(0.25-0.10)=750円 が目標のCPAで、5,000÷750≒6.67倍とROASの表と一致します。
CPAとの関係
1件のコンバージョンが1件の注文で、その金額が客単価なら、ROAS=客単価÷CPA です。そのため、CPAの上限は 客単価÷損益分岐ROAS=客単価×粗利率 になります。
| 客単価(粗利率25%) | CPAの上限 |
|---|---|
| 3,000円 | 750円 |
| 5,000円 | 1,250円 |
| 10,000円 | 2,500円 |
- 客単価が違う商品をまとめた広告:CPAの上限は客単価で変わるので、1つのCPAで判断できません。ROASで見るか、商品ごとに分けて見ます。
- コンバージョンに注文以外が入っている:問い合わせや会員登録もコンバージョンとして数えていると、CPAとROASの関係は上の式どおりになりません。
ツールで確かめる
広告の損益分岐ROAS・ACoSに、販売価格5,000円、広告費を引く前の利益1,250円を入れると、損益分岐ROAS 400%(広告費1円あたり4.00円の売上が必要)、ACoSの上限25.0%と出ます。実績に広告費80,000円・広告経由の売上280,000円を入れると「ROAS 350% → 赤字です(広告による利益の増減:約-10,000円)」と出て、上の計算と一致します。広告費を引く前の利益は、販売価格の逆算や各モールの利益計算で手数料を引いて出してください。
注意すること
- 固定費は入っていない:家賃や人件費などの固定費は、この粗利率に入れていません。損益分岐ROASを上回っても、固定費をまかなえるとは限りません。
- 広告経由の売上の数え方:計測の期間や、どの売上を広告経由と数えるかは広告サービスごとに違います。比べるときは同じ条件でそろえます。
- 税込と税抜をそろえる:売上・費用・広告費は、どれも税抜か、どれも税込にそろえて計算します。
まとめ
損益分岐ROASは1÷粗利率で、粗利率は売れるたびにかかる費用をすべて引いたあとの割合で出します。利益を残したいときは1÷(粗利率-目標利益率)、1件あたりで見るならCPAの上限は客単価×粗利率です。
出典:Amazon広告「ACOS(広告費売上高比率)とは」、Google 広告 ヘルプ「目標広告費用対効果に基づく入札について」、Google 広告 ヘルプ「平均コンバージョン単価」(いずれも2026年10月17日確認)。損益分岐ROAS・目標の利益を残すROAS・CPAの上限の式は、上の定義からこの記事で計算したものです。
商品の利益から、広告で赤字にならないACoS(売上高広告費比率)の上限と損益分岐ROASを計算。広告費と広告経由の売上の実績を入れると、今の広告が黒字か赤字かも判定します。
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