値入率の決め方(値下げ・ロスを見込んで、目標の粗利率を残す)
「原価÷(1-粗利率)」で売価を決めても、値下げや廃棄があると、実際の粗利率は目標に届きません。値下げ・ロスで減る分を先に見込んで値入率を決めると、売り切ったあとに目標の粗利率が残ります。式と計算例をまとめました。
公開:2026年10月17日 最終更新:2026年10月17日 執筆:板野 克基(株式会社ブライトアセット) 編集方針
要点
- 値入率は値付けしたときの売価で、粗利率は実際に売れた額で計算します。値下げや廃棄があると、粗利率は値入率より下がります。
- 必要な値入率は
1-(1-目標粗利率)×(1-ロス率)です。 - 最初の売価は
原価÷{(1-目標粗利率)×(1-ロス率)}です。 - 例:原価1,500円、目標の粗利率40%、値下げ・ロス率10%なら、値入率46%・売価2,778円。値下げを見込まずに2,500円で売ると、同じ値下げで粗利率は33.3%に下がります。
値入率と粗利率の違い
| 言葉 | 計算に使う額 |
|---|---|
| 値入率 | 最初に付けた売価(値付けの時点の見込み) |
| 粗利率 | 実際に売れた額(値下げ・廃棄のあと) |
中小機構の経営自己診断システムでは、売上高総利益率(粗利益率)を「(売上総利益÷売上高)×100」としています。分母は実際の売上高なので、値下げで売上が減ると粗利率も下がります。それぞれの計算式や、原価率・掛け率との違いは粗利率の計算式と、原価率・掛け率・値入率の違いにまとめています。この記事は、その差を先に見込んで売価を決める方法です。
値下げ・ロス率の出し方
この記事では、値下げ・ロス率を次のように決めます。
ロス率=(最初の売価の総額-実際の売上)÷最初の売価の総額
「最初の売価の総額」は、仕入れた数が全部、最初に付けた値段で売れたときの売上です。値引きして売った分の差額も、売れ残って捨てた分の売価も、ここに入ります。
例:前のシーズンに1個2,000円で50個仕入れ、セールと売れ残りを含めた実際の売上が88,000円だった場合。最初の売価の総額は2,000×50=100,000円なので、ロス率は(100,000-88,000)÷100,000=12%です。
必要な値入率と売価の式
| 求めるもの | 式 |
|---|---|
| 必要な値入率 | 1-(1-g)×(1-L) |
| 最初の売価 | 原価÷{(1-g)×(1-L)} |
gは目標の粗利率、Lは値下げ・ロス率です。実際の売上は「最初の売価×(1-L)」になり、そこから原価を引いた粗利の割合がgになるように、売価を逆算しています。ロス率が0なら、値入率は目標の粗利率と同じになります。
計算例1:値下げで売り切る商品
原価1,500円の雑貨を10個仕入れる。目標の粗利率は40%。いつも10個のうち2個は半額で売り切る(ロス率10%)とします。
- 最初の売価:1,500÷(0.6×0.9)=1,500÷0.54=2,777.7…→2,778円
- 値入率:(2,778-1,500)÷2,778=46.0%
| 確かめ(10個売り切り) | 金額 |
|---|---|
| 8個を2,778円で販売 | 22,224円 |
| 2個を半額1,389円で販売 | 2,778円 |
| 売上の合計 | 25,002円 |
| 原価の合計(1,500×10) | 15,000円 |
| 粗利(25,002-15,000) | 10,002円 |
| 粗利率(10,002÷25,002) | 40.0% |
値下げを見込まずに、1,500÷0.6=2,500円で売り始めた場合は、8個×2,500円+2個×1,250円=22,500円、粗利は7,500円で、粗利率は33.3%です。目標より6.7ポイント低くなります。
モールの手数料もかかるなら、手数料込みで売価を逆算する販売価格の逆算(無料・登録不要)→計算例2:売れ残りを廃棄する商品
原価200円のパンを10個作り、いつも1個が売れ残って廃棄になる(ロス率10%)。目標の粗利率は60%とします。
- 最初の売価:200÷(0.4×0.9)=200÷0.36=555.5…→556円
- 値入率:(556-200)÷556=64.0%
- 確かめ:9個×556円=5,004円、原価は200×10=2,000円、粗利は3,004円、粗利率は3,004÷5,004=60.0%
廃棄した1個も原価に入れて計算するのがポイントです。売れた9個の原価だけで計算すると、粗利率を高く見積もってしまいます。
早見表:必要な値入率
| 粗利率30%を残す | 必要な値入率 |
|---|---|
| ロス率 0% | 30.0% |
| ロス率 5% | 33.5% |
| ロス率 10% | 37.0% |
| ロス率 15% | 40.5% |
| ロス率 20% | 44.0% |
| 粗利率40%を残す | 必要な値入率 |
|---|---|
| ロス率 0% | 40.0% |
| ロス率 5% | 43.0% |
| ロス率 10% | 46.0% |
| ロス率 15% | 49.0% |
| ロス率 20% | 52.0% |
ロス率が10ポイント増えると、必要な値入率は粗利率30%のとき7ポイント、40%のとき6ポイント上がります。
ツールで売価を出す
粗利益率・原価率・掛け率の計算には、値下げ・ロス率を入れる欄はありません。先に上の式か早見表で必要な値入率を出し、それを「目標の粗利益率」の欄に入れます。売価の欄は今の売価(まだ決めていなければ初期値のまま)にしておき、原価1,500円・目標の粗利益率46と入れると「目標46.0%になる売価」に2,778円、原価200円・64と入れると556円と出ます(1円未満は切り上げ)。
注意すること
- ロス率は実績から:前のシーズンや前月の売上と仕入れから出します。商品の種類ごとに値下げや廃棄の多さは違うので、まとめずに分けて出します。
- 税込と税抜をそろえる:原価と売価、売上の実績は、どれも税抜か、どれも税込にそろえます。
- 手数料・送料は別:ここでの粗利には、モールの手数料・送料・広告費は入っていません。ネット販売なら販売価格の逆算で手数料も含めて確かめます。
- 上げた売価で売れるか:値入率を上げると売価も上がります。売れる数が減ってロス率が上がると、計算の前提が崩れます。値付けのあとも実際のロス率を記録して、次の値付けに使います。
出典:中小機構「経営自己診断システム 個別指標一覧(売上高総利益率)」(2026年10月17日確認)。値入率と値下げ・ロス率の式は、この記事での定義と計算です。公的機関の資料で値入率の定義を示したページは確認できなかったため、出典には載せていません。
粗利率の計算ツール。売価と原価を入れると、粗利・粗利率・原価率・掛け率をまとめて計算。目標の粗利率から売価を逆算できるので、値付けや値引きの判断に使えます。「原価×1.3」との違いも表示します。
粗利率・粗利の計算を使う(無料・登録不要)公開中のツール 41本・解説ガイド 33本。入力した数字はブラウザの中だけで計算し、サーバーには送りません。