報酬の源泉徴収が不要な場合を4つの順番で確かめる
外注先に報酬を払うとき、源泉徴収が必要かどうかは「誰が払うか」「誰に払うか」「何の支払か」で決まります。従業員のいない個人事業主、法人への支払、対象にならない支払を、国税庁のタックスアンサーNo.2793・No.2792などで2026年10月17日に確認してまとめました。
公開:2026年10月17日 最終更新:2026年10月17日 執筆:板野 克基(株式会社ブライトアセット) 編集方針
要点
- 報酬から源泉徴収するのは、支払う側が源泉徴収義務者で、受け取る側が個人、支払が源泉徴収の対象になる報酬・料金に当たる場合です。どれかが外れれば、報酬・料金としての源泉徴収はしません。
- 給与を払っていない個人(従業員も青色事業専従者もいない個人事業主など)が払う報酬は、源泉徴収の必要がありません(ホステス等への報酬を除く)。
- 青色事業専従者給与を含め給与を払っている個人は、給与の税額が0円でも、対象の報酬を払うときは源泉徴収が必要です。
- 国内の会社(内国法人)への支払で対象として挙げられているのは、馬主への競馬の賞金だけです。
- 懸賞応募作品などの入選者への賞金は、1人に1回50,000円以下なら源泉徴収しなくてよいとされています。
確かめる順番
- 支払う側:自分(自社)は源泉徴収義務者か。
- 受け取る側:相手は個人か、法人か。
- 支払の種類:国税庁が挙げる報酬・料金に当たるか。
- 金額:少額で除かれるものか。
この順に見ると、計算の前に「そもそも差し引くか」が決まります。差し引く場合の税額の出し方は源泉徴収10.21%の計算方法で説明しています。
1. 支払う側:源泉徴収義務者か
国税庁のタックスアンサーNo.2502・No.2110では、会社だけでなく個人・学校・官公庁・人格のない社団なども源泉徴収義務者になるとされています。そのうえで、報酬・料金については次の例外があります(No.2793)。
| 支払う人 | 報酬の源泉徴収 |
|---|---|
| 会社(法人) | 対象の報酬なら必要 |
| 従業員も専従者もいない個人事業主・フリーランス | 不要(給与の支払者でない個人) |
| 青色事業専従者に給与を払う個人事業主 | 必要(給与の税額が0円でも) |
| 常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う個人 | 不要 |
| 会社員が自分の確定申告のために税理士に払う | 不要(No.2502の例) |
ただし、ホステス等に報酬・料金を払う場合は、上の例外に当たらず源泉徴収が必要です。年の途中から人を雇い始めたときなど、給与の支払者に当たるか迷う場合は、所轄の税務署に確認してください。
2. 受け取る側:個人か法人か
国税庁のNo.2792で、居住者(個人)に払う報酬・料金は多くの種類が対象として挙げられていますが、内国法人に払うもので対象とされているのは馬主である法人への競馬の賞金だけです。株式会社のデザイン事務所に払うデザイン料などは、報酬・料金としての源泉徴収の対象として挙げられていません。
- 研究会や劇団などの団体が法人か個人か分からないときは、法人税の納税義務があるか、定款・規約などで団体として独立して存在していることが明らかなら法人、そうでなければ個人として扱います(No.2792)。
- 海外に住む個人や外国法人への支払は、別の決まりがあります(No.2884 非居住者等に対する源泉徴収)。この記事では扱いません。
3. 支払の種類:対象の報酬・料金か
No.2792で、個人に払うもので源泉徴収の対象として挙げられている主なものは次のとおりです。
- 原稿料・講演料など(国税庁「源泉徴収のあらまし」では、作曲料やデザインの報酬などもこの区分に入ります)
- 弁護士・公認会計士・司法書士など、特定の資格を持つ人への報酬・料金
- 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が支払う診療報酬
- プロスポーツ選手・モデル・外交員などへの報酬・料金
- 芸能の出演料、芸能プロダクションを営む個人への報酬・料金
- ホステス・コンパニオンなどへの報酬・料金
- 役務の提供を約束して一時に払う契約金
- 広告宣伝のための賞金、馬主への競馬の賞金
この一覧のどれにも当たらない支払(たとえば商品の仕入れ代金)は、報酬・料金としての源泉徴収はありません。一方で、次の点に注意します。
- 謝礼・研究費・取材費・車代などの名目でも、実態が報酬・料金なら対象です。
- 支払者が交通機関やホテルなどに直接払った、通常必要な範囲の旅費・宿泊費は、報酬・料金に含めなくてよいとされています。
- お金ではなく物品などで払っても対象です。
- 看板・広告塔・展示会場などのデザインと施工をまとめて請け負った人に一括で払う場合は、デザインの部分について源泉徴収します。デザインの部分が極めて少額と認められるときは、源泉徴収しなくて差し支えないとされています(源泉徴収のあらまし)。
- 報酬・料金でも、実態が給与や退職金に当たるものは、給与・退職所得として源泉徴収します。
4. 金額:少額で除かれるもの
No.2792・No.2795では、懸賞応募作品などの入選者に払う賞金や、投稿欄への投稿者に払う謝金は、1人に1回に払う金額が50,000円以下なら源泉徴収しなくてよいとされています。これは懸賞の賞金や投稿の謝金についての扱いで、ふつうの原稿料・講演料・デザイン料を少額だからという理由で除く記載は、この記事で確かめた国税庁のページにはありません。
よくある場面の判断の目安
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| 従業員のいないフリーランスが、個人の外注先にデザイン料を払う | 不要(給与の支払者でない個人) |
| 同じフリーランスが、青色事業専従者給与を払っている | 必要 |
| 会社が、株式会社のデザイン事務所にデザイン料を払う | 不要(内国法人) |
| 会社が、個人に原稿料を払う | 必要 |
| 会社が、個人から商品を仕入れる | 報酬・料金の一覧に当たらない |
| 会社が、講師の新幹線代を鉄道会社に直接払う | 通常必要な範囲なら報酬に含めなくてよい |
| 懸賞の入選者に30,000円の賞金を払う | 不要(50,000円以下) |
実際の判断は、契約の内容や支払の実態で変わります。表は国税庁のページの記載に当てはめた目安です。
よくあるつまずき
- 個人事業主なら必ず差し引くと思い込む:給与を払っていない個人は、報酬の源泉徴収をしません。
- 専従者給与を払っているのを忘れる:家族に青色事業専従者給与を払っていれば給与の支払者です。
- 法人の取引先から差し引く:内国法人への報酬は、馬主への競馬の賞金を除き対象として挙げられていません。差し引くと入金額が請求額と合わなくなります。
- 名目で判断する:「謝礼」「車代」でも、実態が報酬なら対象です。
- 差し引いた後に納めない:源泉徴収したら、支払った月の翌月10日までに納めます(原稿料・デザイン料などは納期の特例の対象外)。
まとめ
報酬から源泉徴収するかは、支払う側(給与を払っているか)、受け取る側(個人か法人か)、支払の種類、金額の順で確かめます。従業員も専従者もいない個人事業主が払う報酬や、会社に払う報酬は、多くの場合は源泉徴収しません。この記事は国税庁の資料にもとづく計算と書き方の説明です。税理士の監修は受けていません。個別の判断は、国税庁の資料や所轄の税務署、税理士に確認してください。
出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.2793「報酬・料金等の源泉徴収義務者」(2026年10月17日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2502「源泉徴収義務者とは」(2026年10月17日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2110「事業主がしなければならない源泉徴収」(2026年10月17日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」(2026年10月17日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2795「原稿料や講演料等を支払ったとき」(2026年10月17日確認)
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし」第5 報酬・料金等の源泉徴収事務(2026年10月17日確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」(2026年10月17日確認)
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