確定申告の源泉徴収税額を確かめて書く(フリーランス・令和8年分)
取引先から支払調書が届かない、届いても全部はそろわない。それでも、請求書の控えと通帳の入金額があれば、差し引かれた源泉徴収税額は自分で確かめられます。入金額から報酬を逆算する考え方と計算例を、国税庁のタックスアンサーNo.2795などで2026年10月17日に確認してまとめました。
公開:2026年10月17日 最終更新:2026年10月17日 執筆:板野 克基(株式会社ブライトアセット) 編集方針
要点
- 確定申告書には、取引先が報酬から差し引いた源泉徴収税額の合計を書く欄があります。差し引かれた額は、納める税金から引かれます。
- 支払調書は、支払った側が税務署に出す書類です。国税庁のタックスアンサーNo.7431に、受け取る人へ渡すことを求める記載はありません。届かなくても、請求書と入金の記録から金額を確かめられます。
- 令和8年分(2026年中に支払われた分)の率は、1回の支払が100万円以下なら10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。
- 請求書で報酬と消費税を分けて書いていれば、源泉徴収は税抜の報酬だけにかけられます。分けていなければ税込の額にかかります。
- 税抜の報酬に10%の消費税を足した請求で、100万円以下なら、入金額÷0.9979=税抜の報酬です。
- 確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。令和8年分の正式な日付は、国税庁の確定申告特集で確かめてください。
令和8年分の源泉徴収の率
原稿料・講演料などの報酬から差し引かれる源泉徴収税額は、所得税と復興特別所得税を合わせて次のとおりです。1円未満の端数は切り捨てます。
| 1回に支払われた金額 | 源泉徴収税額 |
|---|---|
| 100万円以下 | 支払金額×10.21% |
| 100万円超 | (支払金額-100万円)×20.42%+102,100円 |
国税庁の例では、150万円の原稿料なら(150万円-100万円)×20.42%+102,100円=204,200円です。謝金・取材費・車代などの名目でも、実態が原稿料や講演料と同じなら対象になります。
令和8年度の税制改正で、令和9年1月1日以後は所得税に上乗せする2.1%が「防衛特別所得税1%+復興特別所得税1.1%」に分かれます。合計は2.1%のままなので、国税庁は源泉徴収税額の計算方法に変更は生じないと案内しています(国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」令和8年4月)。2027年に支払われる報酬も、10.21%(100万円超の部分は20.42%)で計算します。
支払調書が届かないとき
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、支払った会社などが翌年1月31日までに税務署へ出す書類です(国税庁タックスアンサーNo.7431)。国税庁のこのページに、受け取る人へ写しを渡すことを求める記載はありません(写しを任意で渡す会社もあります)。届かない取引先があっても、それだけで申告を止める必要はありません。
確かめる材料は、手元にある次の3つです。
- 請求書の控え:税抜の報酬、消費税、源泉徴収税額を書いていれば、その額がそのまま使えます。
- 入金の記録:通帳やネットバンキングの明細。請求書に源泉徴収税額を書いていないときは、ここから逆算します。
- 取引先からの支払通知:支払明細のメールやPDFが届くことがあります。届いたものは請求書と金額を突き合わせます。
取引先ごとに「報酬の額」と「源泉徴収税額」を1年分まとめておくと、申告書の作成が早く終わります。
入金額から逆算する考え方
入金額は「報酬+消費税-源泉徴収税額」です。請求のしかたで、割る数が変わります。1回の支払が100万円以下の場合です。
| 請求のしかた | 逆算のしかた |
|---|---|
| 報酬と消費税10%を分けて書いた | 入金額=報酬×(1+0.10-0.1021)なので、入金額÷0.9979=税抜の報酬 |
| 消費税を分けずに税込で書いた | 入金額=税込額×(1-0.1021)なので、入金額÷0.8979=税込の報酬 |
| 消費税なしで請求した | 入金額=報酬×(1-0.1021)なので、入金額÷0.8979=報酬 |
源泉徴収税額は1円未満を切り捨てるので、割り算の答えは小数になることがあります。答えを整数に丸めたら、その報酬から源泉徴収税額と入金額を計算し直し、通帳の入金額と1円まで一致するかを確かめます。源泉徴収の計算ツールの「手取り(振込額)から報酬額を逆算する」欄に入金額を入れても、税抜の報酬を求められます。
1回の支払が100万円を超えるときは、超える部分に20.42%がかかるので、この割り算は使えません。請求書の額から上の表の式で計算します。振込手数料を差し引いて入金されている場合も、入金額に手数料を足してから逆算します。
計算例:入金額262,947円から報酬を逆算する
税抜の報酬と消費税10%を分けて請求し、源泉徴収されて262,947円が振り込まれた場合です(振込手数料は差し引かれていないものとします)。
| 手順 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 1. 税抜の報酬を逆算 | 262,947÷0.9979=263,500.35… | 263,500円 |
| 2. 消費税 | 263,500×10% | 26,350円 |
| 3. 源泉徴収税額 | 263,500×10.21%=26,903.35→1円未満切り捨て | 26,903円 |
| 4. 検算(入金額) | 263,500+26,350-26,903 | 262,947円(一致) |
この取引先の分として、報酬(税抜)263,500円と源泉徴収税額26,903円を記録します。報酬を1円ずらすと入金額は262,945〜262,948円のどれかになり、通帳と1円単位で合いません。検算で一致した額を使います。
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国税庁の「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」では、第一表の「源泉徴収税額」欄(令和7年分の申告書では㊾欄)に源泉徴収税額の合計額を書き、第二表の「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄に該当事項を書くと案内されています。令和8年分の手引きが公開されたら、欄の名前と番号を確かめてください。
- 源泉徴収税額は、確定申告で計算した所得税等から差し引かれます。
- 取引先が多い人は、取引先ごとの表を作り、合計が第一表の金額と一致するかを確かめます。
還付になることが多い理由
源泉徴収は、経費を引く前の報酬の額に一律の率でかかります。一方、確定申告で計算する所得税は、売上から経費を引いた所得から、さらに基礎控除や社会保険料控除などを引いた額にかかります。そのため、差し引かれた源泉徴収税額が1年分の税額より多くなり、差額が戻ってくること(還付)がよくあります。
ただし、還付になるかどうかは、所得の額や控除によって人それぞれです。所得が多い人や、源泉徴収されない売上が多い人は、追加で納めることもあります。
確定申告の義務がない人が、納めすぎた税金を取り戻すために出す申告を「還付申告」といいます。還付申告は確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間出せます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。青色申告特別控除のように期限内の申告が条件の特例を使うときは、期限までに出す必要があります。
申告の期間(令和8年分)
| 項目 | 国税庁の案内 |
|---|---|
| 確定申告の期間 | 原則として、その年の翌年2月16日から3月15日まで(タックスアンサーNo.2020) |
| 令和8年分の正式な日付 | 原則どおりなら2027年2月16日(火)から3月15日(月)までです。正式な日付は国税庁の確定申告特集(例年1月ごろ公開)で確かめてください。令和9年の申告期間は、国税庁の確定申告特集で確かめてください。 |
| 還付申告 | 翌年1月1日から5年間(タックスアンサーNo.2030) |
よくあるつまずき
- 入金額をそのまま報酬にする:入金額は源泉徴収税額を引いた後の額です。申告書の収入や源泉徴収税額がずれます。
- 税込の額に10.21%をかけてしまう:請求書で消費税を分けて書いていたなら、源泉徴収は税抜の報酬にかかっています。請求書の書き方を見てから計算します。
- 振込手数料が引かれている:入金額が逆算の答えと合わないときは、手数料の分を足してもう一度計算します。
- 100万円を超える支払を同じ式で割る:100万円を超える部分は20.42%です。請求書の額から計算します。
- 源泉徴収されていない取引まで逆算する:源泉徴収の対象にならない報酬もあります。請求書と入金額が同じなら、源泉徴収はされていません。
まとめ
支払調書が届かなくても、請求書の控えと入金の記録から、取引先ごとの報酬と源泉徴収税額を確かめられます。逆算したら、源泉徴収税額と入金額を計算し直し、通帳と1円まで一致するかを確かめてください。この記事は計算のしかたと申告書の欄の説明です。税理士の監修は受けていません。個別の判断は、国税庁の資料や税務署、税理士に確認してください。
出典:国税庁タックスアンサーNo.2795「原稿料や講演料を支払ったとき」、No.7431「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」、No.2020「確定申告」、No.2030「還付申告」、国税庁「令和7年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」(源泉徴収税額の欄)、国税庁「確定申告書等の様式・手引き等」のページ(いずれも2026年10月17日確認)。
申告書の欄名の出典:国税庁「令和7年分 確定申告の手引き」の源泉徴収税額の欄の書き方(2026年10月17日確認)。
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